株式会社アテクト

 スペーサーテープでは世界トップシェア! 半導体資材、衛生検査器材に第3の柱の育成に注力

 株式会社アテクト(証券コード:4241)は2006年6月にJASDAQ市場に上場した。
株式公開直前の収益の柱は、「半導体資材事業」と「衛生検査器材事業」であったが、 株式公開後の06年10月には、半導体資材事業の海外生産拠点として韓国に株式会社アテクトコリアを設立。 さらに、積極的なM&Aによって08年1月にトライアル株式会社、続く同年4月には株式会社ダイプラを 傘下に収め、子会社経由によって第3の収益の育成に注力しているところである。 こうした一連の事業展開は、同社の経営理念である「お客様との良好な絆を基にニュービジネスをグローバルに 創造・展開し続ける」ことに基づいて展開している。
 そこで今回、遠方に生駒山がみえる東大阪市にある本社に訪問し、同社の水馬取締役CFOにヒアリングを実施し、 同社の事業概況を中心に「TRIFレポート」としてまとめた。

(1)半導体資材事業 ― 日韓で生産体制が確立

 半導体資材事業のメインは、スペーサーテープという製品の製造・販売(主に直接販売)である。 液晶関連(テレビ、パソコンのディスプレイなど)やプラズマテレビの画面を表示するために使用される 駆動用LSIが、TAB(Tape Automated Bonding)やCOF(Chip On Film)といわれるテープ状の フィルム基盤に実装されているが、これらを保護する製品がスペーサーテープ。この分野で同社は70%の シェアを誇るトップ企業である。主な取引先企業は、三井金属鉱業の子会社であるエム・シー・エス、 カシオマイクロニクス、日立電線などである。


 今期(09年3月期)に入ると、主要取引先企業の1社であるカシオマイクロニクスが08年6月に日立電線の 子会社化、さらに11月には前期の総売上高の15.3%を占める5.4億円の販売額を誇っていたエム・シー・エスが 人員削減計画を公表するなど、同部門を取り巻く経営環境が一転し、厳しさが増してきた。大元のユーザーで ある液晶パネル業界が大幅な減産に踏み切った影響が、背景にある。
 一方、海外に目を向けると、同部門の生産子会社であるアテクトコリアは07年4月より連結対象会社になったが、 その後生産体制を整えるために07年5月に3.7億円の増資を引き受けたほか、貸付金など資金提供をしてきた。 今期はこれまでの積極的な設備投資に対する減価償却費の負担増に加えて、ウオン安の影響もあり、連結決算 ベースの収益は現在のところ厳しい状況が続いている。
スペーサーテープの生産現場

(全工場でフル稼働した場合、月間1,200万辰寮源困可能)
 半導体資材関連事業は景気変動の影響を受けやすく、ここにきて急激に冷え込んでいる景気が来期(10年3月期) 早々から急回復することはあまり期待できそうにない。そこで、国内事業は、増収期待よりも工場の統廃合や 外注の見直し(コーティングの内製化)などコスト削減によって利益確保を目指す方向に傾注しそうだ。
 一方、アテクトコリアの来期の事業展開は正念場を向かえよう。これまでは生産体制の整備に注力してきたが、 これが一段落し、来期は販売に注力していくことになろう。

 韓国市場は価格競争が激しく製品価格の下落が著しいが、同社は「高品質」を武器に他社との差別化を図っている。 日本国内は増産体制よりもユーザーの要求である高い品質に応えるために資本投下してきたが、その技術力を 活かしながら、韓国市場でマーケットシェア20%台から一段のアップを目指している。サムソン電子や LGエレクトロニクスなど液晶関連の大手メーカーが存在しているが、同社は高品質を売り物に取引量拡大を目指す。 加えて、ウオン安は韓国からみれば輸出競争力をつける支援材料であり、同地域から台湾など海外市場に活路を 見出す方針である。

 同社が掲げている経営理念に掲げている「グローバル化」の真価が問われることになるが、これが軌道に乗れば、 来期以降は国内部門の落ち込みをある程度カバーできるものと期待されよう。

(2)衛生検査器材事業 ― 業績は着実に拡大基調へ

 景気変動に左右されやすい半導体資材関連事業とは対照的に、衛生検査器材事業は安定的に事業拡大を遂げている。 衛生検査器材は、主に食品の安全性を検査するための試験器具でディスポーザブル製品であるシャーレなどの製品群や 培地分注済み製品の1つである水質検査用試薬のコリターグなど、多品種の製造、販売を行っている。納入実績は9,600社 を超える。

衛生検査器材関連の生産現場

(シャーレの生産工程の一部))

 前期(08年3月期)の営業利益は原材料の高騰により減益となったものの、その後、価格転嫁が進み、今上半期には一転して 増益になった。さらに、下半期は円高、原油安の影響がプラスに寄与すると期待される。 水馬取締役CFOによると、「主な原材料であるポリスチレンは一日当り4鼎鮠暖顱2召烹鵜租たり50円下がると、1ヵ月で、 実働日数20日×4,000×50円=400万円のコスト削減」になると試算している。08年11月までの直近4ヵ月間で1,600万円 程度のコスト削減効果があったが、原材料価格は下げ基調が続いており、このままいけば2,000万円台を超すコスト削減の 見通しである。
 当社では、同部門がさらに飛躍するには、以下の2点が実現するかどうかに懸かっているとみている。
   ̄超藩益率の向上
 ◆“稜筌船礇優襪粒判爾簇稜簔楼茲粒搬腓覆
 同部門の売上高総利益率は従来、収益の柱の1つである半導体資材関連のそれと拮抗していたが、営業利益率ベースでは 下回っていた(今期は半導体資材関連が減速することで、結果としては逆転する公算が高い)。この背景は、半導体資材 関係は特定ユーザーに依存している一方で、同部門は多品種・小ロットゆえ、「納入実績9,600社」と間口が広く、 このことが逆に販売費などのコストが嵩む要因になっているものと推察される。
 その対策の1つとして、リピートオーダーが着実に増加していくだけでも、数量の増加が期待できるし、コスト面でも 改善が見込まれ、営業利益率は向上するものと期待される。  一方、△砲弔い討い┐弌幾つかの組み合わせによって拡充することが期待できそうだ。具体的には、業種別では食品 関連以外への進出(研究機関、医薬品メーカー、化粧品メーカーなど新規分野)、製品別では付加価値の高い培地分注済み 製品関連、地域別では関東市場での営業拠点の確保(ただし、09年3月期での進出は見送った)などを効率よく組み合わせる ことによって、売上の増大、利益率の向上が一段と図れよう。このような取り組みが来期以降より一段と拍車がかかれば、 業容拡大の余地は大きく、来期の事業部門別でみた収益では、一番の稼ぎ頭になると見込まれる。

(3)子会社群の成否が今後問われる

 「次の事業の柱」を担うのが子会社3社といえよう。水馬取締役CFOによると、「3社に対して投資3.8億円、のれん償却代2億円、 貸付5億円の合計11億円程度の資金投入」してきた。このコメントだけでも同社の意気込みが伺える。  これら子会社への資金は主として借入金で賄っている。08年9月末の長短借入金残高は15億円、07年3月末との比較でいえば10億円弱 増加しており、3社への資金投入分相当額に匹敵する。借入金の利子率を単純計算で試算してみると、08年3月末の長短借入金残高は10億円、 08年9月の支払利息1,379万円を半期分とすると、年間の支払利息はその倍の2,758万円となり、これを借入金残高10億円で除するとおおむね 3%となる。これを有利子負債利子率とすると、3社の事業利益率がそれを上回れば財務レバレッジがプラスに働くことになり、収益貢献への 期待が見込まれる。当面は順ざやになるかがポイントとなろう。

 既述のアテクトコリアを除く2社の子会社についての概要は以下の通り。
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 同社は射出成型やプラスチック造形(積層造形)などを手がけている。
買収前に大口取引先であった大手センサーメーカー向けの金型生産・販売は、採算が合わないと判断し買収後に撤退した。さらに、 金型部門については親会社であるアテクトに統合するなど、収益基盤の強化を図っている。また、人事面においては、親子間の交流を 図ることで、技術・ノウハウの共有化を進めている。子会社の代表取締役がアテクトの技術ディヴィジョンリーダーを兼任しているの その典型例であろう。こうした取り組みによって、親子間にシナジー効果が見込めるような取り組みを行っている。

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 同社はポリマー微粒子等の製造・販売を行っている。
アテクトが同社を傘下に収めてから初めてビジネスとして立ち上がってきたのが、粉末積層造形事業である。これは熱可塑性樹脂 (ポリプロピレン樹脂)を微粒子にした粉末を使用(積層)して造形物を製造事業である。自動車に使用される樹脂部分に関しては、 この造形物によって金型を製作せずに試作ができるといった用途がある。この分野に関しては、NASDAQ上場企業である米国3Dシステムズ社 と業務提携し、自動車関連向けに販売を開始している。自動車及び同関連業界の業績が急速に悪化しており、当面、販売に関して過大な 期待は見込めないが、08年9月の単月であるが、同社向けには1,800万円の販売実績を上げている。

 自動車関連のほかにも用途先が広くある。同社が注目している分野は、トナー関連や化粧品関連などである。また、08年12月には、岐阜県に 本社を構えるシーエムシー技術開発社と共同開発契約を締結。同社の粉末積層造形用ポリマー微粒子に、シーエムシー技術開発社のカーボン マイクロコイルを含有させ新しい電磁シールドなどの開発・製造に向けた取り組みを開始している。
 09年3月期の中間期の2社合計の売上高実績は全体の15%程度を占める3億3,800万円に留まっている。また、利益貢献も現時点ではまだ軽微 である ことや事業利益率が有利子負債利子率を上回っていない。こうしたことを勘案すると、本格的な収益貢献は来期以降となる。

 アテクトコリアを含め子会社群は外部環境が急変する中で、来期以降どう乗り越えるのか、注目されるところであり、10億円の投資効果の 成否が問われる1年となりそうだ。

【最後に】

 リーマン・ショック後、世界経済は想像を絶するスピードで厳しくなっている。こうした外部環境の中で、同社はどう乗り切っていくのか、 今後の事業展開が注目される。

 特に、当社が注目したいのは「株式公開の効果」である。景気変動に左右されやすい半導体資材関連、安定成長が見込まれる衛生検査器材 関連の2大事業から、株式公開後には次の成長のけん引役が期待される粉末積層造形など新たな事業が具現化し、事業に厚みが増してきた。 また、人材についても新卒で、かつ日本人の他に韓国人、中国人など、優秀な人材が採用できるようになったことを、会社は高く評価している。

 来期の09年6月には株式公開から丸3年を迎えるが、当該年度が外部環境の悪化によって次のステージに移るための踊り場に立つ1年になった としても、更なる飛躍を遂げる仕組み作りが着々と構築している。中長期的な視点に立てば売上高で50億円、100億円を達成できるような 潜在成長力を秘めていることは確かのようだ。

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