株式会社アテクト vol.2

 スペーサーテープでは世界トップシェア  今期経常利益は業績の回復基調を背景に2億円を見込む

 株式会社アテクト(証券コード:4241)は09年11月6日に10年3月期第2四半期決算説明会を行った。今回は決算説明会に出席し、同社の業績面を中心にまとめた。

今期の業績見通しは期初計画の変更なく2ケタ増収・黒字転化を計画

 10年3月期の上期の業績は売上高が前年同期比20.6%減の16億84百万円、経常利益は同83.6%減の13百万円と減収・減益になった。ただ、四半期ベースでみた経常利益は、第1四半期まで3期連続の赤字を余儀なくされたが、第2四半期には4四半期振りに黒字転化となり、回復基調が顕著になってきた。
 10年3月期は、09年3月期の決算短信に公表したときの会社計画を変更せず、売上高が前年同期比11.6%増の39億79百万円、経常利益が前期の1億24百万円の赤字から2億23百万円の黒字転化を見込んでいる。
 事業別にみると、主力事業の半導体資材と衛生検査器材は黒字を確保する公算が高い。これに対して、新規事業と位置付けているプラスチック造形事業とポリマー微粒子事業は、収益への本格的な貢献がまだできていないのが現状である。しかし、今回の決算説明会で小高社長が10月16日にリリースしたPIM(Powder Injection Molding)事業について、一定の時間を割いて説明するなど、新規事業への強い取組み姿勢を印象付ける場となった。半導体資材、衛生検査器材に次ぐ第3の収益の柱としていち早く育つことが期待されよう。

PIM事業など事業戦略について語る小高社長
【会社概要】
企業名株式会社アテクト
所在地大阪府東大阪市角田2-1-36
代表者名代表取締役社長 小高 得央
事業概要半導体資材、衛生検査器材、プラスチック造形、ポリマー微粒子などの製造・販売
URLhttp://www.atect.co.jp/
売買単位100株
URL404円(09年11月20日終値)

(1)今第2四半期に4四半期振りに黒字転化

 右のグラフは同社の連結ベースでみた業績の推移で、上段が売上高総利益率、中段が売上高、下段が営業利益である。08年9月のリーマンショックを端を発した世界的な金融不安、さらに景気後退となった影響が同社にも直撃を受けたことが、右のグラフから端的に読み取れる。
 09年度に入り、世界景気は徐々に落ち着きを取り戻し始めている。中でも、世界経済の牽引役になっているのが中国経済で、中国テレビ市場が活況であったことや、エンドユーザーであるパネルメーカーの稼働率が急回復したこともあり、主力事業の半導体資材事業の収益が今第1四半期に3期振りの黒字転化となった。さらに、景気変動にあまり左右されない衛生検査器材事業は着実に利益を伸ばしており、主力2事業部門の活躍で、会社全体の業績は4四半期振りに黒字転化した。
 今期業績計画は、09年3月期の決算短信では、今期の上期と通期の会社計画を公表しているが、業績予想は期初計画を変更していないので、決算説明会ではその前提で行われた。
 ちなみに、通期の業績予想は、売上高が前年同期比11.6%増の39億79百万円、営業利益が49百万円の赤字から2億52百万円の黒字転化、経常利益が1億24百万円の赤字から2億23百万円の黒字転化、当期利益が2億63百万円の赤字から1億22百万円の黒字転化となっている。これら通期計画から上期実績数値を差し引いた額が今回の下期計画とすると、売上高が22億95百万円、営業利益が2億22百万円、経常利益が2億10百万円、当期利益が1億71百万円となる。表では売上高、営業利益について部門別にまとめたが、既述の通り、便宜的に下期計画を算出しているため、部門別にみた営業利益の下期計画は歪になっている点は留意が必要だろう。


ところで、期初の通期計画と上期計画の差額が、下期の期初計画とするならば、売上高が20億8百万円、営業利益が1億99百万円、経常利益が1億85百万円、当期利益が1億33百万円になる。これを今回の下期計画と比較すると、上期が期初計画を下回ったために、今回の方がどの数値も多少高くなっているが、極端に乖離した数値になっていないことが窺える。
通期の業績見通しを修正していないのは、こうした乖離幅が比較的小さいことだけでなく、主力事業はある程度、トレンドが掴めることもあり、半導体資材や衛生検査器材の収益は表でみた数値を上回る公算が高いと、会社サイドでは判断していることが背景にあると思われる。一方、新規事業がどれだけ収益に貢献できるかは、不透明感がまだありそうで、これら事業の成否が、利益面の変動要因となるのではないだろうか。それだけに、新規事業の今後の展開が注目されよう。

 次に、同社の事業である半導体資材事業、衛生検査器材事業、プラスチック造形事業、ポリマー微粒子事業の今期の見通しや取り組みについて概観した。

(2)半導体資材事業

 液晶テレビ、プラズマテレビ、パソコンなど液晶ディスプレイの画面を表示するための駆動用LSIは、テープ状のフィルム基盤が実装される。このフィルム基盤を保護するためのテープが同社のスペーサーテープ(注:写真参照)である。同製品は世界市場の7割を占めている。
 今期は本庄工場の本社工場への統合による経営の合理化効果がでてきたことや中国でTV市場の活況やパネルメーカーの稼働率向上などによって、業績が回復基調を辿っている。

半導体資材のメイン製品スペーサーテープ
子会社であるアテクトコリアはウォン安を背景に、現地で原材料(PETフィルムなど)を仕入れ、コーティング工程や成形工程は日本で行い、再度、韓国に輸出するなどして、コスト管理を徹底してきた。アテクトコリアは、台湾への輸出や韓国内で積極的な営業を展開している。
 こうした絶え間ない取組みが功を奏し、営業利益ベースでみた利益は08年度第3四半期に77百万円の赤字に転落したものの、09年度第1四半期には10百万円黒字転化、続く第2四半期は41百万円の黒字を達成した。また、売上高総利益率もボトムとなった08年度第3四半期は9.8%だったのが09年度第2四半期にはリーマンショック以前と同水準の30%台を回復するまでになっている。

(3)衛生検査器材事業

 衛生検査器材は、主に食品の安全性を検査する試験器具でディスポーザブル製品であるシャーレ(注:写真参照)や培地分注済み製品である水質検査用試薬のコリターグなど、多品種の製造、販売をを行っている。総顧客件数は11,000事業所になっている。
 ちなみに、前回の取材(08年12月取材時点)では10,000事業所弱であったことと比較すると拡大していることが窺える。取引先は食品関連から製薬関連分野と対象業種も広がりがでてきている点も注目されよう。
 今期の取組みとしては、無菌製造ラインを構築し、シャーレ製造方法では無菌コーティングが確立するなど、製造コストを下げる技術革新に取り組んできた。

衛生検査器材の1つシャーレ
 こうした取組みが収益面にどう反映しているのであろうか?
まず、売上高面は前期並みの水準で推移している。これに対して、小高社長は「大口顧客に対する納入がなくなった。これは価格競争を避けるために選択した」ことが大きいとみている。
 次に利益面をみると、09年度第1四半期の営業利益は前年同期比72%増の43百万円、第2四半期は同96%増の47百万円と、際立った伸びを示している。売上高総利益率も順調に高まり、第1四半期の41.9%から第2四半期には四半期ベースでは最高とみられる44.1%を達成した。

(4)プラスチック造形事業とポリマー微粒子事業

 プラスチック造形事業は、子会社であるダイプラ社が射出成形やプラスチックの積層造形などを手掛けている(注:写真の「3次元積層造形」参照)。
同事業のうち金型部門は親会社に統合するなどの収益基盤の強化を図っているが、大手液晶パネルメーカーの設備投資が延期になったため、主力の成形受託業務が低調に推移した。この結果、今上期の営業損失は57百万円となった。
ポリマー微粒子事業は、子会社であるトライアル社がポリマー微粒子等の製造・販売を行っている。ポリマー微粒子(注:写真参照)を対象に粉末積層造形としては、カーボンマイクロコイルを含有させた電磁シールドなどの開発に取り組んでいる。
 また、自動車に使用される樹脂部門は金型を製作せずにポリプロピレンの粉末を積層して試作できるため、自動車分野の用途を期待している。ただ、この分野は米国3Dシステムズ社との業務提携を行っているが、自動車業界の開発の見送りの影響もあり、今上期は収益の貢献は小さかった。この結果、今上期の営業損失は54百万円となった。
 新規事業と位置付けられる両部門の業績は厳しい結果となったが、下期も基調は大きく変化しないと思われる。ただし、技術開発や営業を積極的に行っており、来期以降、収益貢献度合いが高まってくると期待される。そのリード役と期待されるのが、10月にリリースし、今回の決算説明会でも披露したPIM事業である。以下、PIM事業について若干、まとめた。



(5)PIM事業について

 PIM(Powder Injection Molding)とは、「粉末射出成形の略で、金属やポリマー微粒子などの微粉末とバインダの混合物を金型で射出成形し、取り出した成形品を、真空炉で脱脂と高温焼結して金属製品をつくりだす方法」(09年10月16日にリリースした同社の資料より抜粋)で、小高社長の説明によると、\K\催戮高い⇔婿魂修できるF睇構造の軽量化が図れるなどのメリットがあるとのこと。ちなみに、素材に金属粉末を用いる場合をMIM(Metal Injection Molding)とセラミックス微粉末を用いるCIM(Ceramic Injection Molding)と区別している。
 同業他社は30社ぐらい存在しているが大半は材料の提供が主で、金型まで手掛ける企業は同社ぐらいである。融点が高く加工が難しいとされる超耐熱合金などの素材を利用して量産化を目指すターボチャージャー用ローター、熱伝導率の高さに関しては発光効率を高めるには放熱性が求められるLED照明やLED用ヒートシンクなどが、用途先として注目している。ダイプラ社はPIM部品の量産化、トライアル社はPIM用バインダの開発・量産化と、両社の得意とした分野を活かしながら協業関係を深めることで、新規事業を軌道に乗せていく方針を打ち出している。

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